六畳一間

ボーイッシュなレズは彼女を作るのが大変だ

もうすぐ雨が降るかもしれない



下駄の人


私は古いアパートの2階に住んでいる。
何年か前の春。自分の住むアパートに帰る時のこと。
ベランダにたくさんの花を飾っている部屋が2階にあるのを見つけた。

鉢に植えられたたくさんの花がベランダの外に向かってめいっぱい咲いている。
あの部屋は何号室だろう?私の隣の隣の隣ぐらいだろうか?
そんなに花が好きな私ではないけれど、同じアパートに花を育てている人がいる。
そのことが私には嬉しかった。

花の主は女性だと勝手に私は思い込んだ。
できればレズビアンだったら良いとも思った。
しかし花の主は下駄を履いた男性だと分かった。

ある土曜日にコンビニへ行こうと玄関の鍵を閉めている時、
隣の隣の隣の下駄さんも玄関の鍵を閉めていた。
気まずいから下駄さんと向かう方向か歩く速度をずらしたかった。
しかし下駄さんも私が目指すのと同じコンビニに入った。

あいさつさえしない私たちだけれど、たまにコンビニで一緒になった。
下駄さんはまったくおしゃれではないけれど、ベランダの花のセンスが良い。
このギャップはどうしたことか?

下駄さんはほぼ毎日自炊をしている。
下駄さんの家の換気扇はいつもせわしなく働き、
下駄さんのつくる料理のいいにおいを運んでくる。

そんな下駄さんを観察している私も相当な暇人だが、
下駄さんは花に囲まれた自宅でどんな仕事をしているのだろう?
花と下駄さんのギャップが気になって、何度も考えてしまう。
花を育てて自炊もする。
もし私に声をかける勇気があるなら話しかけてみたい。
テレビドラマみたいに貧乏アパートのなかに友達ができたりするのだろうか?
ちなみに下駄さんは春だけでなく真冬でも下駄なのだ。

君に教わった曲を忘れることはできない


私は阿佐ヶ谷の彼女と春に出会い春に別れた。
今日はなんとなくタテタカコの曲を聴きたくて。
Spotifyでかけている。

タテタカコは彼女に教わった。
私は彼女と出会う前にSNSでメッセージ交換している時にタテタカコを教わった。

彼女は私と出会う前、趣味活していた。
好きなミュージシャンのライブに行きまくっていた。
そうすると前座でまだ知られてないミュージシャンの歌を聴けるらしくて。
またライブハウスに知らないミュージシャンのフライヤーとかも置いてあって。

私はネットやYouTubeで好きな曲を探していたけれど、
彼女は足を使っていろんなミュージシャンを発掘していたわけだ。
その活動のなかで見つけたタテタカコYouTubeを私に教えてくれた。

力強いピアノと年齢性別不明な透き通る声。
私はタテタカコの音楽に夢中になった。

タテタカコ以外にも倉橋ヨエコとかハンバートハンバートとか…
忘れてしまったけれど、いろんなミュージシャンを彼女から教わった。
彼女の好きな曲は明らかに私の好きな感じとかぶっていた。
好みの曲が合う度、合う度、胸がドキドキする。
この世界にこんなに感性が合う人がいるんだと驚き喜んだ。
スピッツとかキリンジとかクラムボンとか…
お互い共通で好きなミュージシャンもいっぱいいた。

別れて辛い時も、そこを通過して気持ちに整理がついてからも、
君に教わった曲を忘れることはできない。
私がこの世を去る時。
一緒に食べたすべて、一緒に聴いたすべて…、一緒に話したすべて…
君と過ごした12年間を走馬灯のように見ることができるだろうか。

違う人を好きになる準備ができても、違う人を好きになっても。
私は阿佐ヶ谷の彼女のことを一生忘れることはできないだろう。
私の病気を癒してくれたのは君だから。

 

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